いいリーダーとは
良いリーダーとは
2015年日本のスポーツ界における最大のニュースといえば、
ラグビー日本代表、通称エディジャパンのラグビーワールドカップ、南アフリカ戦での歴史的逆転勝利でしょう。
この試合の勝利をきっかけに日本でラグビーが一躍注目を集め、五郎丸選手や山田選手、田中選手などの主要な選手は多くの雑誌やテレビ番組にも出演、国内リーグの注目カードの試合のチケットは即完売するなど一大ラグビーブームを巻き起こしました。
まったくの余談ですが、東京の秩父宮ラグビー場で開催された国内リーグの試合観戦に集まる観客の大行列とニューヨーク発の大人気バーガーショップSHAKE SHACKの行列が青山の外苑通りに横並びに出来、どちらに並べばいいのか迷うことさえありました。(スタッフの誘導が慣れていなかったのが一気にブーム化した証だと思います。)
さらに余談ですが、日本代表にも選ばれていた真壁選手は高校の同級生で休み時間によく一緒にサッカーをしていました。もともとデカい体でしたが、当時に比べて同じ人間とは思えないぐらい体が大きくなっているので、どれだけ大変なトレーニングを積み重ねてきたのか容易に想像できます。
そんな一大ブームを巻き起こしたエディジャパンですが、その注目を五郎丸選手に取られはしたものの、快進撃の一端としてリーチマイケルというキャプテンの存在を忘れてはいけません。
五郎丸選手よりも年下で27歳という中堅の年齢でありながら、チームをまとめた彼こそが、
僕が考えるいいリーダーの姿そのものなのです。
日本国籍を取得した日本人ではありますが、ニュージーランド出身のリーチマイケルは決して話し上手で周りを巻き込むタイプの選手ではなく、どちらかというと寡黙なタイプの選手です。
恐らく多くの人が想像しているリーダー像というのは、チームのムードメーカーとしてメンバーを鼓舞し、引っ張っていく存在なんじゃないかと思います。しかしリーチはそれとは真逆のリーダーなのです。
もちろん僕もリーダーがムードメーカーであることを否定しているわけではありません。ムードメーカーかどうかといった表面的な要素ではなく、その奥にある本質を見つめてこそ、いいリーダーの条件が見えてくるのです。
その隠されている、いいリーダーの条件とは、
“場の方向性を定め、それを守り育てていける人”かどうかです。
そして、その行為を強制力によってではなく、メンバーそれぞれの自発的な行動によってまとめていくことが重要なのです。
過去のリーダーと呼ばれた偉人などを振り返ってみると、武力や財力など強制力を用いて人々を引っ張っていったリーダーが賞賛されていた時代もありますが、それは過去の時代に求められていたリーダー像です。
社会や組織が不安定の世の中では、どこに向かって進めばいいのかさえわからず、しかもその判断の結果が人の生死に大きく関わることさえありました。そんな時代では力ずくであったとしても「こっちへ進もう」と力強く引っ張ってくれる存在が必要とされ、実際に世界を切り開いてきました。
しかし、今の日本のように成熟した社会ではここは自分に合わないと思った段階で別の場所に移動できる自由があります。そのため強制力によって人々を縛りつけるリーダーは必要とされていないのです。
そんな中、エディジャパンキャプテンのリーチマイケルは何をしたのかというと、
代表期間中
誰よりも早く練習を始め
誰よりも真剣に練習をし
誰よりも最後に練習を終える
ということをしていたのです。
文字にすると単純なことのように思えますが、実際にそれを実行し続けることは容易ではありません。いくら代表に選ばれるような人間であっても、気分が乗らない日、体がついてこない日などもあったでしょう。それでもリーチは長期的な目的から視線をそらさず、
上記のことを守り続け、メンバーの信頼を勝ち取っていったのです。
ラグビーでは、試合が荒れてきた際などに審判が選手に向かって
「ディシプリン」と言うそうです。ディシプリンとは自己規律のこと。
英国発祥のラグビーは紳士のためのスポーツと言われています。つまり、紳士として相応しい振る舞いを思い出せという意味で「ディシプリン」と言われているのです。
リーチマイケルは、ディシプリンを持って、誰よりも一生懸命練習に取り組む姿を見せることで、エディジャパンに相応しい姿を他の選手に見せていたのです。
良いリーダーの条件として
“場の方向性を定め、それを守り育てていける人”と定義しましたが、
それはリーダー自身がその場に相応しい振る舞いを続け、その背中をメンバーに見せていくことです。
いいリーダーでいるために、他のメンバーより多くの実績や才能が必要なわけではありません。
ただ、その場に相応しくあり続け、その背中を見せ続けることができれば、メンバーが自然とついてきてくれるのです。
P.S この文章を書き上げた後に見ていたサッカー日本代表のワールドカップ予選シリア戦では普段とは違いFWの岡崎選手がキャプテンマークをつけていました。ハリル監督は「(岡崎の)最後まで全力を尽くす姿は日本代表に大きなものを与えてくれる」と岡崎に対して多大な評価を下していました。
リーチマイケルと同じく、その背中によって道筋を示してくれる人物が求められている証拠だと思っています。